双子ママですが、別れたはずの御曹司に深愛で娶られました
私は自然と感じたことを口からこぼす。
「なんだかここは時間の流れ方がゆっくりな気がしますね」
外を歩く人々はなんら変わらない日常なのに、窓を隔てたこちら側はやけに静かでゆったりとした時が流れている気がする。
「本当に。居心地のいいお店ですね」
楢崎さんが穏やかな口調で肯定した。
「店名のsoggiornoとは、イタリア語で『居間』とか『寛ぎ』とかいう意味合いだそうで。言葉通り、ゆっくりとした時間を過ごせるお店ですね。ほっとする」
それは雑誌の受け売りだったけれど、彼は黙って優しい面差しで聞いてくれていた。
真正面から目を逸らさずにいられると、こそばゆい気持ちになってしまって落ち着かない。
「あの、楢崎さんもコーヒーがお好きなんですか?」
間を埋めるように当たり障りのない質問を投げかけた。
コーヒーが嫌いだったら、オーダーするわけなどない。
言ってしまった後にそう気づいたけれど、もう遅い。訂正することもできず、ただ自分の余裕のなさを責めていた。
そんな当たり前の問いかけにさえも、楢崎さんは嫌な顔ひとつ見せずに答える。
「僕ですか? そうですね。仕事でコーヒーを学ぶ機会があり、それがきっかけでハマったという感じです」
仕事で? だとしたら、私と同じような業種なのかもしれない。
前回会った際には連絡先どころか勤務先の話題にもならず、名字だけを伝えあって別れていたから、実は気になっていた。
私は失礼にならない程度に質問を重ねる。
「差し支えなければ、どのようなお仕事を?」
コーヒーに関連する職とひとくちに言っても多すぎる。皆目見当もつかず、好奇心を抱きつつ彼の返答を待った。楢崎さんは、私を一瞥し、一瞬瞼を伏せて唇を引き結んだ。それから、おもむろに口を開く。
「『リアルエステイト楢崎』という会社はご存知ですか?」
リアルエステイト楢崎――。
大手不動産会社の内のひとつ。大きなビルや高級マンションなどに楢崎から取った〝NS〟の文字をよく見る。
「まさか、楢崎さんって......」
私が目を剥いてつぶやくと、彼は苦笑意を浮かべて言う。
「はい。父がリアルエステイト楢崎の代表をしています。そして僕は、本社社長秘書兼専務取締役として勤務しています」
「しゃ......!」
社長秘書!? というか専務取締役兼任って!
「なんだかここは時間の流れ方がゆっくりな気がしますね」
外を歩く人々はなんら変わらない日常なのに、窓を隔てたこちら側はやけに静かでゆったりとした時が流れている気がする。
「本当に。居心地のいいお店ですね」
楢崎さんが穏やかな口調で肯定した。
「店名のsoggiornoとは、イタリア語で『居間』とか『寛ぎ』とかいう意味合いだそうで。言葉通り、ゆっくりとした時間を過ごせるお店ですね。ほっとする」
それは雑誌の受け売りだったけれど、彼は黙って優しい面差しで聞いてくれていた。
真正面から目を逸らさずにいられると、こそばゆい気持ちになってしまって落ち着かない。
「あの、楢崎さんもコーヒーがお好きなんですか?」
間を埋めるように当たり障りのない質問を投げかけた。
コーヒーが嫌いだったら、オーダーするわけなどない。
言ってしまった後にそう気づいたけれど、もう遅い。訂正することもできず、ただ自分の余裕のなさを責めていた。
そんな当たり前の問いかけにさえも、楢崎さんは嫌な顔ひとつ見せずに答える。
「僕ですか? そうですね。仕事でコーヒーを学ぶ機会があり、それがきっかけでハマったという感じです」
仕事で? だとしたら、私と同じような業種なのかもしれない。
前回会った際には連絡先どころか勤務先の話題にもならず、名字だけを伝えあって別れていたから、実は気になっていた。
私は失礼にならない程度に質問を重ねる。
「差し支えなければ、どのようなお仕事を?」
コーヒーに関連する職とひとくちに言っても多すぎる。皆目見当もつかず、好奇心を抱きつつ彼の返答を待った。楢崎さんは、私を一瞥し、一瞬瞼を伏せて唇を引き結んだ。それから、おもむろに口を開く。
「『リアルエステイト楢崎』という会社はご存知ですか?」
リアルエステイト楢崎――。
大手不動産会社の内のひとつ。大きなビルや高級マンションなどに楢崎から取った〝NS〟の文字をよく見る。
「まさか、楢崎さんって......」
私が目を剥いてつぶやくと、彼は苦笑意を浮かべて言う。
「はい。父がリアルエステイト楢崎の代表をしています。そして僕は、本社社長秘書兼専務取締役として勤務しています」
「しゃ......!」
社長秘書!? というか専務取締役兼任って!