双子ママですが、別れたはずの御曹司に深愛で娶られました
 雄吾さんの機転の利いた対応に感心していたら、彼は片腕で男の子を抱っこして、空いた手で私を掴んだ。私は驚いて雄吾さんを見上げる。
「俺の腕に手を添えてて」
「えっ?」
「春奈さんも迷子になったら困るから」
 彼は決してからかっているわけではなく、本当に私を心配して言ってくれたのだろう。
 こんな時に私のことまで気にしてくれる彼に、つい苦笑した。
「もう。もしも私が迷子になっても、ちゃんと対処できますよ」
 雄吾さんはどこまでも人に気を配ってくれる人なのだなと、改めて実感する。
 私がやんわり断るも、彼は私の手を離さずに逆に引き寄せた。そして、耳元でささやく。
「――迷子は口実」
 普段以上に甘い声色が耳孔を通り、私は瞬時に彼を見た。意味ありげにニッと口の端を上げていて、彼の言動にはほかの意図があるのだと伝わる。途端に頬が熱くなり、雄吾さんを直視できなくなった。
 口実って、それはつまり私と腕を組んで歩きたいとかそういう......。
 深読みしすぎかもしれない。だけど、ちらりと雄吾さんを見れば、なにか期待するような眼差しでこちらを見ている。
 私はおずおずと雄吾さんの右腕に手を添え、ぽつりと言う。
「これで大丈夫ですね......?」
 すると、彼が満足そうに目を細めて「ああ」と返した。
 それからすぐ、私たちは男の子の保護者を探した。
 この辺りを回ってみてから館内のスタッフのところへ引き渡そうということになったのだ。
 雄吾さんに抱っこされた男の子は、きょろきょろとして一生懸命パパやママを探している。順路を少し戻ったところでその子が声をあげた。
「パパぁ!」
「祥(しょう)悟(ご)!」
『パパ』と呼んだ男の子の声に反応し、ひとりの男性が急いでこちらにやってきた。男性は五歳くらいの女の子を抱っこしていて、後からついてきたお母さんであろう女性もまた、一歳になるかならないかの乳児をベビーカーで連れている。
 私はご夫婦が祥悟くんのほかにふたりも子どもを連れてやって来ていたことを察し、まいごになってしまった理由がわかった気がした。
「パパとママ?」
 雄吾さんが優しく問いかけると、祥悟くんは「ん」と大きく頷いた。そしてパパのほうへ両手を伸ばす。
 男性は女の子を一度下ろし、祥悟くんを抱いて頭を下げた。
「すみませんでした。息子を保護していただきありがとうございます」
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