双子ママですが、別れたはずの御曹司に深愛で娶られました
「いえ。無事に再会できてよかったです。泣いたのもほんの少しだったし、パパも自分で見つけられたしね。今度はパパとママにくっついてるんだよ」
 雄吾さんはそう言って、祥悟くんの頭にポンポンと手を置くと、「バイバイ」と手を振って別れた。祥悟くんはすぐに人混みに紛れて見えなくなった。すると、雄吾さんが手を下ろし、笑いを噛み殺してぽつりとつぶやく。
「あの子も〝ショウゴ〟って言うのか」
「〝も〟?」
 首を傾げる私に、彼は微笑んだ。
「ああ。僕には弟がひとりいるんだけど、名前が尚(しょう)吾(ご)って言うんだ」
「へえ。そうなんですね! それは奇遇でしたね」
「本当だよね。驚いた」
「迷子の祥悟くん、可愛かったですね。泣きそうなのをグッと我慢する姿とかすごく愛らしかった。それに、抱っこされてた女の子もベビーカーの赤ちゃんも。いいなあ、赤ちゃん。大変でしょうけど、癒しですよね。いつか自分の子を抱いてみた......い」
 変な間が生まれないようにと、ぺらぺら話したのはいいものの、なんだか恥ずかしい内容にも思えてきて途中で口を噤む。
「あ! あそこにギフトショップがありますよ!」
 私は話題を変えるべく、視界に入ったギフトショップの看板を指さした。
「本当だ。寄ってみる?」
「はい。せっかくなので見てみましょう」
 笑顔で答えるや否や、スッと手を差し出された。
「えっ」
「もう手は空いたから」
 彼は言うなり私を待たずに手を繋ぐ。
 また改まって手を繋ぐとなると、照れくさい。決して嫌なわけではないけれど、気恥ずかしい気持ちもあって、素直にその手を握り返せずにいた。
 瞬間、グイッと引き寄せられ、彼の顔が近くなる。
「僕から離れないで」
 低い声でささやかれ、胸がきゅっと締めつけられる。
 それから館内を回り終えるまで、ずっと手は繋がれたままだった。

 水族館を出た後は近くのカフェでランチをとり、海沿いの公園をゆっくり散策した。それから車で都心部へ戻ってきた時には、もう夜七時になる頃。私は雄吾さんに連れられて、恵比寿にある隠れ家的フレンチレストランを訪れていた。
 今日は彼に気持ちを伝えようと思って意気込んでいたはずが、気づけばもう夜だなんて。
 私は内心愕然として、彼と向かい合って座っていた。
 これまでのデートの中で、今日が一番進展があったと思っている。
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