双子ママですが、別れたはずの御曹司に深愛で娶られました
 私は火照った顔に気づかれないように、煩悩を振り払うように玉ねぎの皮をむいていた。

 グラタンをオーブンに入れて焼き上がるまでの時間、雄吾さんが紅茶を淹れてくれた。その間、私は立ったままリビングをもう一度眺める。
「座らないの? 紅茶用意できたよ」
 雄吾さんはカップを持ってコンパクトなダイニングテーブルに置いた。
 円盤の形をしたふたり用のダイニングテーブルは、モデルルームくらい広いリビングやダイニングに置くには、ややミスマッチ。意外だった。
「あ、テーブル狭いかな。ごめん」
 雄吾さんは申し訳なさそうに言って、ダイニングチェアに座った。
「ううん。ふたりくらいならちょうどいいと思う」
「誰かがうちに来て食事をすることもないし、ひとりで軽く食事をする程度でしか使わないから」
 彼の言葉を疑う余地などない。本当にゲストが来る機会もなく、食事の時のみ使用しているテーブルなのだと思う。
 さっきも思ったことだけれど、部屋のそこかしこに雄吾さんがどう過ごしているか、そんな光景がありありと目に浮かぶのだ。
 私は雄吾さんの向かい側に腰をかけ、紅茶を前にお辞儀をする。
「いただきます」
「どうぞ。そうだ。紅茶飲んで少し待ってて」
 席を外す雄吾さんを首を傾げて見送ると、数分後に紙袋を持って戻って来た。
「先週末の出張先で買ってきたおみやげだよ」
「えっ。おみやげ?」
 まったく予想していなかったから、目を丸くしてしまった。
 雄吾さんは再び席に着くと、紙袋から長方形の箱型のものを出して私にくれる。
 シックなダークブルーの包みにオフホワイトとシルバーのサテンリボン。私の中での〝おみやげ〟のイメージとは少しかけ離れた見た目に戸惑った。
「これ、本当に出張みやげ?」
「そうだよ。三重の伊勢志摩に行ってきたんだ。開けてみて」
 雄吾さんに促され、丁寧に包装を解く。箱のふたを開けると、ひと粒真珠のネックレスが入っていてものすごく驚いた。
「三重県は真珠発祥の地と言われているんだ」
「そ、そうなんだ......。でもこれ」
 真珠って、こんなに綺麗なものなんだ。すごく高そう。
 上品でシンプルなデザインだから普段使いも仕事でも使えそうだけど、こんなに素敵なものを簡単に受け取ってもいいのだろうか。
 茫然として箱の中身を見続けていたら、ぽつりと聞かれる。
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