双子ママですが、別れたはずの御曹司に深愛で娶られました
 気になって誰が同席するのか聞き返そうとしたら、彼が先に口を開く。
「ところで、もしかして春奈の子どもって双子なの?」
「えっ。あぁ......はい」
 この間、海斗と一緒に迎えに行って鉢合わせた時に初めてふたり揃ったところを見られたんだった。
 しどろもどろになって答えた後には、なんとなくさっきの話題に戻せなくて再び俯いた。
「やっぱりそうなんだ。可愛いけど、まだふたりは小さいから育てるのも大変そうだ」
 まだ席に通されて数分なのに、もう気まずい。
 居た堪れない気持ちで唇を引き結んでいると、ノックの音がしてほんの少し気が緩む。
「お連れ様がお見えになりました」
 スタッフがにこやかにそう言って一歩下がると、後方から男女ふたりが姿を見せた。
「悪い。遅くなった」
 雄吾さんに対しフランクに謝る男性は、雄吾さんに負けず劣らず美しい顔立ちの人だった。
 上質そうなスーツを身にまとい、凛とした佇まいから、おそらく私よりは年上だと思う。
「ごめんなさい。お待たせしてしまいました」
 続いて鈴を転がすような声でお辞儀をする女性を見る。
 その女性は私よりも年齢は下のように見える。お人形のような綺麗な黒髪とつぶらな瞳。白い肌は触らずとも柔らかそうな、ちょっと幼さが残る可愛らしい容姿をしていた。
 その女性を見て、なにかが引っかかる。私が記憶を掘り起こしている間に、ふたりは私たちの正面の席に着く。
「春奈。紹介するよ。僕の弟の尚吾。それと、尚吾の奥さんの果乃子ちゃん」
 雄吾さんの説明に目を剥いた。
〝果乃子ちゃん〟って! 二年経った今もまだ忘れずにいる自分にも驚くけれど、間違いなく雄吾さんのスマートフォンに表示されていた名前だ。
 それに、顔もどこかで......と思ったのは、この間海斗に見せてもらった雑誌で彼女を確認していたからだ。
 大きな衝撃を受け、挨拶もままならない私に対し、弟と紹介された尚吾さんは丁寧に頭を下げる。
「どうも。楢崎尚吾です」
「初めまして。楢崎尚吾の妻、果乃子と申します」
 予想外の同席者に戸惑いを隠せない。いっぺんに多くの情報が入ってきて混乱するばかり。
 私は茫然として、果乃子さんを黙って瞳に映していた。
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