双子ママですが、別れたはずの御曹司に深愛で娶られました
 すると、次に尚吾さんが話し出した。
「もし、あなたが誤解をしているようならこの場で宣言します。俺と果乃子は初めからお互いが縁談相手に決まっていたし、兄は一切関係ないです」
 私は尚吾さんと向き合い、重い口を動かす。
「え......。どういうことですか? だって私は、弟さんの......尚吾さんのご友人だという女性から話を聞いて。それに......」
 なによりも、自分の目で確かに見た。雄吾さんが親しげに果乃子さんに花束を渡しているのを。
 私が瞳を揺らしていると、尚吾さんと果乃子さんが目配せをする。
「あぁ。すみません。それは宇田川のことですよね。たしかに彼女は俺の同級生です。ちょっと当時……色々ありまして。まさかこんなふうに兄さんたちを巻き込むことになっているとは」
 尚吾さんは心から申し訳なさそうに声のトーンを落とし、瞼を伏せた。それから、再び私を見る。
「端的に言いますと、まったく結婚なんて考えていない仕事人間の俺が無理やり見合いをさせられると考えた友人が、思い込みでそういう解釈に走ってしまったんです」
「ご友人が、思い込みで......?」
 そんな話って、ある?
 だけど、この場にいる私以外の全員が神妙な面持ちで視線を落としている。
 宇田川さんは尚吾さんに想いを寄せていたようだった。つまり、彼女の早合点だったということ? 恋愛に夢中になって周りが見えなくなるタイプには見えなかったのに……。
「本当にふたりには申し訳ないことをしました」
 尚吾さんは真摯な態度で謝罪の文言を口にして、果乃子さんと一緒に深々と上半身を倒した。
 信じる......? だって、正面に並んで座るふたりを見ていたら疑う要素などひとつもない。真面目そうな尚吾さんと、清純そうな果乃子さん。このふたりが、わざわざ横浜まで出向いて、ひと芝居を打つ可能性の方が低そうだ。
 私はとりあえず真偽は置いておいて、いまだにこちら側に頭を下げ続けるふたりに声をかけた。
「あの、尚吾さん、果乃子さん。顔を上げてください。もう過ぎたことですから。わざわざ東京からここまで来ていただいて、逆に申し訳ありませんでした」
 そもそも私は当時から、弟の尚吾さんを巻き込みたくないというのもひとつの理由で雄吾さんに別れを切り出した。
 現実はどうあれ、こうして尚吾さんとさらには果乃子さんにまで時間を割いてもらうのが心苦しい。
 あたふたしていると、尚吾さんが私を射るように見て発言する。
「いえ。あなたには、過去のこととして話を終わらせられると困るんです」
「え?」
< 96 / 119 >

この作品をシェア

pagetop