双子ママですが、別れたはずの御曹司に深愛で娶られました
 果乃子さんは私に礼儀正しく挨拶をしたのち、雄吾さんに軽く手を振って去っていった。その様が、やっぱりどこか親しげにも思えて複雑な心境になる。
 私は再び雄吾さんとふたりきりになり、なにから話を再開させたらいいか戸惑う。席に着くのも遠慮していると、雄吾さんもおもむろに立ち上がる。
「尚吾もああ言っていたし、このままふたりで食事をするってことでいいかな?」
 そう言って、さっきまで私が座っていた椅子の背もたれに手を触れると、スタッフさながらに再び椅子を引いてくれた。私はおずおずと着席する。会話に困って、手にしている花を話題にした。
「花......綺麗ですね。果乃子さんの見立てでしょうか」
 こんな状況でも、花を見ると心が和む。
 頬を緩めて言うと、雄吾さんが穏やかな口調で返してきた。
「見立てっていうか、それはきっと彼女がアレンジメントしたものだと思うよ」
「そうなんですか? すごい。でも納得です。花が似合う可憐な方でした」
 プロみたいに上手。こういうのって簡単そうに見えて、センスがないとなかなか難しい気がする。
 まじまじとアレンジメントされた花を見ていると、雄吾さんが笑う。
「果乃子ちゃんは花を育てたりするのが好きなんだよ」
 彼の返答に、私は再び顔が強張る。
「雄吾さんは果乃子さんのこと......」
 尚吾さんと果乃子さんが今では円満夫婦らしいのは、目の当たりにしたからわかったものの、肝心な雄吾さんの心は知らないままだ。
「彼女のことは、ずっと妹みたいに可愛がってる。彼女は樫山フードのひとり娘で、僕たちが小さい頃から家族ぐるみの付き合いがあったから。で、今は本当に義妹だ」
 くすくすと笑う彼を見て、拍子抜けした。
 小さい頃から家族ぐるみで......。つまり、幼なじみみたいなものという話? 果乃子さんについて話す雄吾さんからは、異性に対する特別な感情は一切感じられない。
 そうだったんだ。じゃあ、雄吾さんのスマートフォンに登録されていた彼女の誕生日は幼なじみの付き合いとして......。
 あの日、真っ先に彼を疑い勘違いした自分を心底責めた。
 しかし、もうすべては過ぎ去ってしまったことで、現実はなにも変わらない。
 そこにノックの音が割り込んできた。尚吾さんが声をかけてくれたのか、スタッフがやってきて雄吾さんがオーダーをする。
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