密かに出産するはずが、迎えにきた御曹司に情熱愛で囲い落とされました
「あ、そうでした」

そっか、今日入籍したんだった。まだ実感が湧かない。

両親や祖父母以外に家族と呼べる人ができるなんて、数日前のどん底だった私には想像もできなかった。

「さっき、うちの両親にも入籍したと電話で報告したから」
「え!」

平然と報告され、私は狼狽する。

「今度きみと食事をしたいそうだよ」
「そ、そうですか」

透真さんのお父様は大会社の社長だ。一緒に食事をするのはなんだか緊張する。
そんな気持ちが表情に出ていたのか、透真さんは私からフッと目線を外した。

「まあ、無理しなくていい。うちの親も多忙だし」

透真さんの次に続く言葉は、『それにどうせ俺たち、三ヶ月で離婚するんだから』だろうか。

せっかく思い出を共有できたけれど、そういう契約なんだから当然だ。
そう頭ではわかっているけれど、なんだか少し切ない気もした。



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