大嫌いと言われた元カレに再会したら、息子ごと溺愛が待っていました
「田神さん……ね」

忘れもしない脳裏に甘く響く彼の声。十年ぶりだというのに、まるで昨日のことのように思い出せる。
彼もまた私と同じように目を瞠っていたが、すぐに取り繕ったような笑みを浮かべた。

「わかった。よろしく頼む」
「はい……こちらこそ、よろしくお願いいたします」

まさか拓也が、ワンダープレイの専務取締役だったなんて思いもしなかった。しかも社長が彼の父親だなんて。

高校時代に付きあっているとき、拓也の家がわりと大きな会社をいくつも経営しているとは聞いていた。
彼の母は、平凡なサラリーマンを両親に持つ私では拓也の相手にふさわしくないと思っていたのだろう。いつも見下すような目を向けられた。
お屋敷と言っても差し支えない自宅にお邪魔すると、挨拶を返された試しがない。そのたびに拓也が申し訳なさそうに謝るものだから、彼に負担をかけたくなくて、デートは自然と外になった。

私は第一秘書だという佐々木《ささき》さんに秘書室に案内され、デスクに着いた。
ここは無理な残業を言いつけられないところだといいけれど、そう思いながらパソコンを開き、仕事の説明を受けた。

時刻は十八時。私がパソコンの時計を見ながら、まだデスクに戻ってこない佐々木さんを待っていると、秘書室に拓也がやって来た。
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