大嫌いと言われた元カレに再会したら、息子ごと溺愛が待っていました
「お疲れ様。明日もよろしく」
「はい、よろしくお願いします」

まだこの会社で働いてもいいのだろうか。優しくされただけで、胸の奥がじんと熱くなって涙が滲んでしまう。慌てて背を向けても、バレバレだったらしい。

「どうして泣く?」
「泣いてません。すみません、大丈夫ですから。お先に失礼します」

私は慌ててその場を立ち去ろうとする。だが、それよりも前に拓也の腕が伸びてきた。

「寧子」

十年ぶりの響きが耳の奥に優しく甘く届く。

忘れたかった。忘れようと思った。それでも、まだこんなにも好きなままだ。思えば、高校時代のたった三年間だけなのに、私にとってかけがえのない恋だった。彼と過ごす毎日がどれだけ幸せだったか、今もなお昨日のことのように思い出せる。

「お願い……離して」
「離せと言うなら、俺の前で涙なんて見せるな。憎い女のままでいてくれ」

あぁ、彼は忘れてなどいなかった。
私はほかの男の子どもを妊娠したと偽ったのだから。憎まれて当然のことをした。

「すみません、失礼します」

私は彼の手を振りほどき、鞄を手にエレベーターホールへと向かう。パソコンの電源を落としてないと気づいたけれど、戻る勇気はなかった。
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