大嫌いと言われた元カレに再会したら、息子ごと溺愛が待っていました
「どうして、結婚してないんだ?」

それでか、とようやく納得がいった。

「あのとき、言ったよな? 拓也よりお金持ちだし、お母さんに付きあい反対されることもないって。結婚して子どもを産んでほしいって言われたから、大学進学はやめてそうするつもりなのって。それなのに、契約書に書かれた住所は実家。名前は田神のままだ」
「結局、上手くいかなくて……別れたの」

私は窓の外を見ながら言った。あのときは別れる覚悟を決めて、あらかじめ原稿を作っておいた。彼になにを聞かれても答えられるように。でも今は。二人きりの状態で詰問されて、上手く答えられる自信がない。

「息子の名前は?」
「どうしてそんなこと聞くの?」

震えそうになる声で返すと、拓也は自信ありげな眼差しで口を開いた。

「確認のためだ。寧子から妊娠の件を聞いたとき、初めてだって言っておきながら、俺に隠れてほかの男と遊んでたんだって、そんな女だったのかって失望した」
「私は……そういう女よ」

そう思ってほしくて、うそをついたのだ。
彼に恨まれても憎まれてもいい。幸せになってほしかった。もしも彼の子だと打ち明けていたならば、彼はきっと大学進学をやめただろう。

彼の母親は私たちの交際に反対だった。妊娠が決定的な家族の亀裂となりかねない。当時の私はそこまで深く考えていたわけじゃなかったが、ただ拓也を守りたいと思ったのだ。

今思えば、浅はかな考えだ。妊娠は一人ではできない。責任は二人にある。わかっていて拓也を庇った。困らせたくなかったから。重荷になりたくなかったから。
< 18 / 57 >

この作品をシェア

pagetop