大嫌いと言われた元カレに再会したら、息子ごと溺愛が待っていました
「今さら責任取ってなんて言わない。そんなつもりであの子を産んだわけじゃない。もう、忘れてほしいの」
「忘れる? できるかよ。まだわからないか? 俺はただ、寧子に会いたかったんだ。十年、一度だってお前を忘れたことなんてなかった。誰と会って話していても、寧子の温もりばかり思い出す。苦しくておかしくなりそうだった。さっき言っただろう? 俺の血を引いてなかろうが関係ないって。お前が今、結婚していないのなら、諦める理由がない」

車はやがて住宅地に入り、スピードを緩める。私の実家まで、あと五分もかからない。これ以上一緒にいたら抗えなくなる。どうか早くと祈るような気持ちで私は首を振った。

「あなたとよりを戻すつもりはないの」
「俺は諦めないって言っただろ? 会わせてくれないか? 秀也に」
「名前、知ってたのね」
「言ってたよな。将来結婚して子どもができたら、どちらかの名前を一文字入れたいって」
「ほんといやになっちゃう、その記憶力」

どうして十年も前なのに覚えているのだろう。
だが、私も人のことは言えない。私だって、彼に関わる話は忘れたくとも忘れられなかった。覚えていたいのだと脳に刻みつけるように繰り返し、頭の中に流れる。

「今さら、父親になりたいなんて虫が良すぎるってわかってる。ただ、秀也の顔が見たいだけなんだ」

彼は自宅近くで車を停めた。家の真ん前じゃないのは、私への配慮だろう。

声が聞こえれば、秀也とお母さんが外に出てきてしまうかもしれない。母は父親が誰かも知らないし、秀也にも話していない。そこに拓也が現れれば揉めることは間違いない。
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