大嫌いと言われた元カレに再会したら、息子ごと溺愛が待っていました
(それに……好きな人の前では、やっぱり綺麗でいたいって思っちゃうし)

 秀也を育ててきて、自分がどんなにぼろぼろの格好でも恥ずかしいと思ったことはなかったのに、彼の隣に並ぶことを考えると途端に恥ずかしくなる。この格好なら、並んでいても拓也に恥をかかせなくて済みそうだ。

 バッグの中身を入れ替えたところで拓也がやってきた。

「そろそろ行こうか」

 手を差しだされて、つい秀也をちらりと見つめる。秀也は私が拓也と手を繋ぐことになんの疑問も抱いていない。いいのかと迷いながらも、拓也の手に自分の右手を重ねた。

「犬飼さんは、お母さんを守る仲間だから」

 秀也はそう言って、私の左手を握った。こうして手を繋ぐのはずいぶん久しぶりだ。

「二人でお姫様を守るんだよな?」

 拓也はキザったらしく手の甲に口づけまでしてくる。そして耳元に顔を寄せられる。

「夜、お姫様の服を脱がすのは俺の役目だから。確かめさせてくれるんだろう?」

 私は恥ずかしくて顔を上げられない。頭に血が上ったように頬が熱を持っている。今夜は秀也と一緒に拓也の家に泊まる予定だ。秀也は、拓也の家に行くことを純粋に楽しみにしているが、私はそれどころではない。

「あ、お母さん顔赤くなってる」
「もうっ、秀也はよけいなこと言わなくていいの」

 店を出て車に乗り込むまで手は繋がれたままだった。
 結局、夜のことを考えると、新作ゲームの内容はまったく頭に入ってこなかった。
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