大嫌いと言われた元カレに再会したら、息子ごと溺愛が待っていました
「俺を、秀也のお父さんにしてくれないか? 君と一緒に、お母さんを守りたいんだ」
「仲間?」
「そうだ、仲間だ……それで、家族になる」
「うん、べつにいいよ。僕、犬飼さんをお父さんって呼んだ方がいいの?」
「呼んでほしいけど、無理にとは言わない。急に俺を父親だって思うのも難しいだろ?」

拓也は苦笑しながら言った。十年父親がいない生活だったのだ。たしかに拓也をすぐに父親とは思えないかもしれない。

「そんなことないよ。お父さんがいたらこんな感じなのかなって、昨日ずっと思ってたから。ゲームの話とか楽しいし。お父さんのお仕事すごいね」

昨日の秀也のはしゃぎっぷりはすごかった。拓也とゲームの話題ができて嬉しかったのかと思っていたのだが、父親だとしたらと考え、自分の中で確認していたのかもしれない。本当に聡明な子だと思う。

話が終わり、そろそろアパートに帰る準備をしようとしたとき、部屋のインターフォンが鳴り響いた。

「誰だろう」

彼がぼやきながらインターフォンに応答すると、女性の甲高い声が聞こえてくる。拓也は疲れたように天を仰ぎながら「悪い」と口に出した。

「誰?」
「母さんだ。最近ずっと電話を無視してたから痺れを切らしたのかもな」
「ちょうど良かった。挨拶させて」
「いいのか?」

彼は意外そうに目を瞠る。

「うん、私はなにを言われても平気。でもこの子には聞かせたくないかな」
「そうだな。秀也……これから人が来るんだ。少しの間だけこっちの部屋で遊んでいてもらえるか? ゲームがたくさんあるから好きなのをやればいい」

拓也は秀也を別室に連れていき、壁に掛けられたテレビのスイッチを入れた。そしてヘッドフォンを秀也の頭に嵌める。

「えっ、いいの!?」
「もちろん。お客さんとの話が終わったら呼びに来る。ここで遊んでいて」
「わかった」

秀也はもうゲームに夢中でこちらを見てはいなかった。その間もインターフォンはうるさく鳴り続けている。
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