シークレットベビー~初めまして、愛している。記憶喪失からはじまる二度目の結婚生活は三人で~
彼以上の人は私のこれからの人生においてもう現れないと思う。

「弥紗、これを受け取ってくれ」

「えっ?」

彼は私に小さな紙袋を渡した。

「でも、俺が日本を発つまで開けないでくれ」

それはまるで、亀が浦島太郎に渡した玉手箱のようだった。

「玉手箱」みたい」

「あ、そうだな」

彼は私の言葉に頷き、アペリティフを飲み干した。

「こうしていると最初に行った。ホテルのディナーを思い出すな」

「え、あ…」

彼に誘われ行ったディナー。

私は緊張してナイフを落としてしまった。恥ずかし過ぎて顔を赤くし、パニックになり、次の行動が出遅れてしまった。
そんな私のナイフを拾い上げて、スマートにウェイターを呼び交換してくれと言った慧斗さん。

これで二度と誘われる事はないと思ってしまったが。

それからも何度もデートを重ねた。
夕映えの山下公園での告白。

そして、彼の部屋で初体験。

そして、結婚、ハネムーンはハワイ。

―――離婚したくなかった。それが素直な本音だ。






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