シークレットベビー~初めまして、愛している。記憶喪失からはじまる二度目の結婚生活は三人で~
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『インダストリー』本社。総務部。
東京に住む姉・神崎千紗(カンザキチサ)から突然の連絡を受けた。
丁度昼休憩の最中だった。

私はお弁当を食べ終え、のんびりと缶コーヒーを飲みながら全面硝子の向こうに見えるオフィス街を眺めていた。

姉はすすり泣いていた。

「お姉ちゃん、どうしたの?」

「今朝方、勇気が息を引き取ったの…」

「えっ?」

勇気君は私の甥っ子であり、姉の愛息。
生まれながら、難病を患いずっと姉が看護師として勤める『清友会総合病院』に入院していた。

生まれつき銅が欠乏する病で、食事中に摂取される銅が体内に吸収されず、中枢神経細胞が必要する酵素が働かなくなり、様々な症状を引き起こす、国が難病に指定し、およそ十二万人の割合で原則的男児に発症する。母親が保因者の場合、五十パーセントの確率で発症するらしい。

姉は勇気君を出産後、担当医の勧めで遺伝子検査を受け、病の保因者だと判明した。

母は父と共に私が高校生の時にバス事故で亡くなり、病の保因者である否かは不明。





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