【コミカライズ決定】婚約者の浮気相手が子を授かったので
「はい」
「よかった。君が熱を出したと聞いて、気が気でなかった。本当に、気が付かなくて悪かった。薬は、オレが『調薬』した」
「だから、すぐに熱が下がったんですね」
 夢の中で、何やら苦い物を飲んだ記憶はある。解熱剤の欠点は苦いことだ。
 使用する薬草の特徴から、どうしても苦い薬が出来上がってしまう。特に、その苦みを子供たちは嫌がる。これを如何にして飲みやすくするか、というのもエルランドとファンヌの共通研究の一つでもあった。茶葉の力を借りて液体にするなど、それなりに研究は進んでいるのだ。
「何か、食べ物をもらってこようか? スープとか」
 立ち上がろうとするエルランドの服の裾を、ファンヌは思わず掴んでいた。
 ファンヌもなぜ彼を引き止めてしまったのかがよくわからない。熱でうなされた頭のせいかもしれない。
 だけど、彼と離れたくない想いが、心のどこかに引っかかっている。
「エルさん……。私、変なんです……」
 先ほどから胸がチクチクと痛む。
「大丈夫か? また、熱が出てきたのか?」
 エルランドの問いに、ファンヌは首を横に振る。
「胸が苦しいんです……」
< 150 / 269 >

この作品をシェア

pagetop