【コミカライズ決定】婚約者の浮気相手が子を授かったので
 ファンヌが顔をエルランドに向けると、目の前に彼の顔があった。鼻先が髪に触れるくらいの近さに彼がいる。
 ファンヌはすぐにエルランドから視線を逸らした。それでも横から、エルランドの熱い視線を感じ、ファンヌはつい肩をすくめてしまう。
「そうだ、ファンヌ。あの扉の前にあるテーブルはもういらないだろう?」
 耳元で囁くようなエルランドの声がどこかくすぐったい。もぞもぞと肩を動かしながら、ファンヌは彼の言葉を聞いていた。
 彼が言うテーブルとは、ファンヌがこの部屋を与えられた時に、エルランドの部屋と繋ぐ鍵のかからない扉の前に置いたテーブルのこと。
「なんでもう、いらないと思うんですか?」
 ファンヌは彼を見ずに尋ねた。
「だって、オレたちは婚約者同士になるわけだろう? だったら、一緒に眠っても問題はないよな?」
 その言葉の意味を考えたファンヌは、ハッとしてエルランドの方に顔を向けた。彼は悦に入ったような笑みを浮かべている。
「ダメです」
「なぜだ?」
< 163 / 269 >

この作品をシェア

pagetop