婚約者の浮気相手が子を授かったので
「ああ。だが、リヴァスに行くのであれば、君のご両親にもきちんと挨拶をした方がいいな。パドマに向かう前に、そちらに寄ってからの方がいいよな?」
「え?」
 むしろ、そちらの方がファンヌにとっては予想外だった。ただパドマにエルランドの転移魔法でこそっと行って、こそっと論文を確認して、こそっと帰ってくるものだと思っていたのだ。
「まずは、君のご両親に手紙を書こう。それから、マルクスの意見も聞きたいからマルクスにも」
「え? マルクス先生にもお会いするのですか?」
「何か、問題でもあるのか?」
「いえ」
 これではこそっとどころの話ではない。
「マルクスの野郎にも、君と婚約したことを伝えなければな。あいつは、ことあるごとにオレは結婚できないと言い放っていたからな」
 もしかしてマルクスに会うのは、論文の見解を求めるのではなく、ただ婚約を自慢しに行くためではないのか、とファンヌは思えてきた。
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