【コミカライズ決定】婚約者の浮気相手が子を授かったので
 三階の一番手前の扉がマルクスの研究室である。
 ドンドンドン、とエルランドが乱暴に扉を叩けば「どうぞ」と穏やかな声が中から返ってきた。
「入るぞ」
「相変わらずだな、君は……。なんか、雰囲気が変わったような気がするが?」
 エルランドとファンヌを迎えてくれたのは、丸顔でおでこの広いマルクスだ。茶色の髪は少しくせがあるが、とにかくちょっとだけ広いおでこが特徴的である。
「気のせいだろ? それよりもお前の方が、おでこが狭くなって雰囲気が変わったんじゃないか?」
「おお、気づいてくれたか? そうなんだよ。『調薬』がうまくいってね……。まあまあ、立ち話もなんだから、そこに座れ。って、ファンヌか? 一年ぶりか? それ以上か? 元気にしていたか?」
 ファンヌに気づいたマルクスは懐かしそうに目を細めた。
「なんだ。ファンヌも雰囲気が変わったな」
 学校で研究に励んでいた頃のファンヌは、シャツにトラウザーズという格好が多かった。だが今日は、研究のために学校を訪れたわけではないので、お気に入りのラベンダー色のワンピースを着ている。
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