婚約者の浮気相手が子を授かったので
 エルランドが焦り始めた様子を見たファンヌは、間違いなく彼が惚気てきたことを感じ取った。
「私も、みんなにはエルさんと婚約したことを伝えてしまいましたが、問題なかったでしょうか」
「問題ない。堂々と言いふらせ」
「エルさん」
 ファンヌが名を呼び、顔を近づける。
 こうやって、ファンヌはエルランドの扱い方にうまくなっていくのだ。彼から嫉妬という感情を取り除くために。

 図書館の閉館時間を知らせる鐘が鳴り響いた。
「もう、こんな時間か。残りの資料は明日、確認しよう」
「そうですね。今日、確認したものには、めぼしい情報がありませんでしたね」
 エルランドは主に薬草の効能の変化についてを調べているが、ファンヌは獣人と薬草のかかわりについてを調べていた。
 残念なことに、獣人をテーマにした論文が少なく、あったとしても書かれている内容もファンヌがベロテニアで知り得た内容ばかり。まして、獣化や先祖返りといった内容については、そういった事例もあるという一言程度。
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