【コミカライズ決定】婚約者の浮気相手が子を授かったので
「ですが。王宮で働かせるのは反対です」
 エルランドが、銀ぶち眼鏡の下で目を吊り上げる。
「どうして?」
 息子とは正反対に、王妃の目尻は下がっていた。
「不特定多数の人間が出入りする……」
 呟くようにエルランドは言葉を吐き出した。
「だったら、あなたのところで働かせればいいじゃないの」
「うっ……」
「まさか。連れてきたのはいいけれど、その後のことは何も考えていませんでした。って、そういう顔をしているけれど?」
「うぅ……」
 二人の話を黙ってきいていたファンヌは、エルランドの腕を手でとんとんと叩いた。先ほどから口元を塞がれているため、少し息苦しいのだ。
「はぁ……。先生、苦しかったです」
「す、すまない……」
 またエルランドは身体を小さくする。
「で、先生。私はこちらで先生のお手伝いをすればよろしいですか? よろしいですよね」
 ファンヌにそこまで言われてしまったら、エルランドも拒否することができない。
「そ、そうだな……。頼む……」
 もちろん彼はファンヌに弱い。それは彼女が彼の下で研究を始めた当初からである。
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