僕の特技は秘密です
「じゃぁ、リンゴジュース。」

「かしこまりましたー!」

梨香子ちゃんはつーちゃんのオーダーを聞くとバックヤードに元気に向かっていった。

あの子はいつも元気だなぁ。とぼんやりしていると、

「今日は来てくれてありがとう。」

つーちゃんがお礼を言ってきた。

「気にしないでいいよ。祖父母の家に届けるものもあったからついでだよ。」

一条家の姫の命令は絶対だ。しかし、この用事がなくても絶対に僕はつーちゃんに会いに来た。

「この後、一緒に校内を周れたりするの?」

「あ、うん。あと30分で交代なの。そしたら教室から出られる。」

「良かった。」

つーちゃんと一緒に文化祭を周れるなんてラッキーだ。
まるで同じ高校生な気分を味わえる。つーちゃんと会ってから顔のにやけが本当に止まらない。

「お待たせしました~。ケーキとお飲み物です~。」

にやけ顔にならないように気を引き締めていると、元気な彼女がオーダーしたものを運んできた。

「椿ちゃんの幼馴染の梨香子ちゃんだったよね?ありがとう。」

つーちゃんに会えて嬉しいテンションのまま彼女にお礼を言う。

すると、テンション高めの僕とは真逆に少し差がったテンションのつーちゃん。

「今日はつーちゃんって呼ばないんですね。」

「あぁ、、、呼びなれないけれど、子どもっぽい呼び方されるのって学校では嫌かなぁ~て思って。」

「そうだったんですね。なんか、距離を置かれたのかと思っちゃいました…。」

「ははっ、そんな心配いらないのに~」

まったく不要な心配だ。距離を置くどころか縮めたいから二時間半もかけてここにいる。

ケーキを食べているとみんなで作ったものだという。見た目なんかお店で出しているものと大差ないと思った。
つーちゃんの手作りケーキだと思うとめちゃくちゃ美味しく感じた。
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