結ばれてはいけない御曹司に一途な想いを貫かれ、秘密のベビーごと溺愛されています
――おもしろいぐらい、ディーラーの手のひらの上で転がされているな。

本当に、ド素人のようだ。まだまだ世間を知らない、いいとこのお嬢様といったところか。

まあ、この客船に乗っているくらいだから、どうせ湯水のように金を使う連中のひとりなのだろうが。

運がよければ、なにかおもしろい話でも聞けるかもしれない。

挑発に乗ってさらに金を上乗せしようとした女性に近寄り、俺は肩を叩いた。

『もうその辺にしておきなさい』

カモを奪われたとディーラーに恨まれないよう大負けして、たんまりとチップを渡し、彼女を連れてカジノを出た。



声をかけた彼女は、とんだ箱入りのお嬢様だった。

「もしよかったら、お食事をご馳走させてもらえませんか?」

ひとり旅だと明かし、初対面の俺を部屋へ招き入れ、食事をもてなす。

襲ってくれと言っているとしか思えないが、変なやましさは感じられない。

かといって『純粋』という言葉で片づけるには、いくらなんでも危なっかしい。

つい「俺が悪い人間なら、君はもう襲われているよ」とお節介事を言ってしまった。

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