結ばれてはいけない御曹司に一途な想いを貫かれ、秘密のベビーごと溺愛されています


船を降りると俺はイギリスへ、彼女は日本へ、それぞれの帰路についた。

もちろん、すぐに連絡を取り合うつもりだった。海外赴任もじきに終わる。俺は日本に帰国し、霞が関にある財務省本省で勤務することになるだろう。

そうすれば菫花とともに生活できる。その先に待っているのは、幸せな結婚だ。

そんなことを考えていた矢先。待ち望んでいた菫花からの連絡は、別れを切り出すものだった。

『政略結婚をすることになった。もう理仁さんとは会えない』――これが菫花の言い分だ。以降、連絡が途絶えた。

この決断が菫花自身の意志だとも思えない。なんとか思い直してもらおうと、休暇を取って日本に帰国した俺は、彼女の実家に赴いた。

しかし顔すら合わせてもらえず、門前払い。彼女は頑として取り合ってはくれなかった。



「あのお嬢さんのことはあきらめて、いい加減、理仁も自分の縁談に応じたら?」

菫花に執着していることを唯一知る兄が、わざわざそれを告げるためだけにイギリスまでやってきた。

「これ、銀行から取り寄せた綿来製鉄の内部情報と信用調査。経営にかなり苦しんでいるみたいだね」

分厚いファイルを俺に手渡す。他人ごとにしてはずいぶんと手の込んだ資料を作らせたようだ。

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