結ばれてはいけない御曹司に一途な想いを貫かれ、秘密のベビーごと溺愛されています
「……なぜ兄さんがそこまでするんだ」

「当然。藤ヶ音家の跡取りに幸せな結婚をしてほしいからだよ。俺は跡目争いから離脱した身だからね。せめてできることをしようと思って」

よく言う、と嘆息する。さも親切のように言うが、俺が良家の令嬢と結婚して家を継いでくれたら、兄は自由になれて都合がいいのだろう。そこにあるのは打算だ。

「お嬢さんの政略結婚の相手は合併先の会社令息だって? 確かに、この二社が手を組めば倒産は免れるだろう」

家業の負債を清算するための政略結婚――それでは身売りと同じだ。

彼女の人生が金で切り売りされると思うと、いてもたってもいられなくなった。

自分にできることはないかと、考えを巡らせる。

「……うちが取り扱う産業は鉄鋼業と相性がいい。うちから投資、あるいは提携を結んでやれば――」

「やめておけ。規模が違いすぎる。うちが相手では、綿来製鉄は吸収されるしかない。それじゃあ向こうの経営陣は納得しない。そのために彼らはわざわざ合併を選んだんだから――って、お前だってわかっているだろ?」

……もちろんわかってはいるのだが、納得できる問題ではない。

< 118 / 182 >

この作品をシェア

pagetop