結ばれてはいけない御曹司に一途な想いを貫かれ、秘密のベビーごと溺愛されています
「あのお嬢さんも覚悟を決めたんだ。理解してやれ」

他人事のように言う兄を、俺は恨みのこもった目で睨みつけた。怒りの矛先が間違っているとは、自分でも重々承知しているのだが。

兄も驚いたようで、珍しく平静を失っている弟の姿に目を丸くしている。

「理仁。どうしてそこまであのお嬢さんに執着する? よっぽど夜の相性がよかった?」

「女は飾りと思っている兄さんにはわからないだろう」

「お前こそ。似たようなものだったじゃないか。いったいどんな心変わりだ?」

――それは、菫花と出会ったからだ。

そう説明したところで、今以上にからかわれるだけだろうと予想がついたので言葉を呑み込んだ。

「……結婚は菫花としか考えられない」

少なくとも今の俺には、別の女性と歩む未来なんて想像もできない。

頑なな俺を見て、兄はこれ以上忠告しても無駄だと悟ったのか、あきらめたように嘆息した。

「ああ、そうだ、理仁。あの客船でお前が調べてくれたこと、役に立ったよ」

ふと兄が話題を変える。

「やはりあの船の売り上げの一部が過激派に流れていた。とくにあのカジノ、推測通りイカサマをして荒稼ぎしているようだ」

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