結ばれてはいけない御曹司に一途な想いを貫かれ、秘密のベビーごと溺愛されています
途中で高級青果店に立ち寄り、バナナと旬のさくらんぼを購入。

杏花は上手にさくらんぼが食べられるだろうか。種が出せるか心配ではあるが、難しいようであれば種を抜いてやればいい。

近くのパーキングに車を停め、アパートに向かう。

しかし、角を曲がったところで、アパート二階の共用廊下で泣き叫んでいる小さな子どもが見えて、まさかと蒼白になった。手すりの隙間から見えるあの背格好は――。

「杏花!!」

杏花が玄関のドアに向かって縋りつくように泣いていた。いったいなにがあったというのか。菫花はあの中にいるのか?

俺は急いでアパートに向かい、階段を駆け上がった。

「杏花、どうしたんだ!」

杏花の前に膝をつくと、顔をぐしゃぐしゃにして「パパぁ」とか細い声をあげた。

杏花の全身をよく確かめ、怪我がないことを確認する。

「どうした? ママは中にいるのか?」

すると、杏花はひくひくと嗚咽を漏らして体を震わせながらも、俺を真っ直ぐに見上げてはっきり言った。

「ママを、たすけて……」

ハッとして、顔を上げる。その瞬間、部屋の中からドンという物音が聞こえた。 

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