結ばれてはいけない御曹司に一途な想いを貫かれ、秘密のベビーごと溺愛されています
「菫花!?」

ノブに手をかけるが、鍵がかけられていて開かない。

老朽化したアパートは防音性が低く、中から男女の言い争うような声――知らない男の怒声と菫花の悲鳴が響いてきた。

「菫花!」

悠長に鍵が開くまで待ってはいられない。

俺は杏花を抱き上げると、共用廊下の奥に進み、安全な場所で下ろした。

「ママはパパが必ず助ける。杏花はここで待っていてくれ」

そう言い置いてドアの前に戻ると、ドアノブの付近を力の限り足で蹴りつけた。

激しい音を立ててドアフレームがひしゃげる。施錠の金具が弾け飛び、ドアが内側に開いた。

古びた木製のドアで幸いだった。鉄製の頑丈なドアではこうはいかなかっただろう。

部屋の中では、色黒の男が菫花の上に馬乗りになり、襟もとを掴んでいた。

男は轟音に反応してこちらに振り向き、破壊されたドアを見て目を丸くする。

俺は男の下敷きになっている菫花の強張った表情を目にして、理性を失った。部屋に踏み込み「そこをどけ!」と男の肩を掴んで弾き飛ばす。

「ぐあっ」

男は壁に背中を打ちつけて、畳に転がる。

菫花を助け起こすと、彼女は焦った様子で「杏花は!?」と縋りついてきた。

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