結ばれてはいけない御曹司に一途な想いを貫かれ、秘密のベビーごと溺愛されています
「ママぁ!」

声に振り向くと、壊れたドアの向こうから杏花が駆け寄ってくるところだった。

「杏花! 痛いところはない!?」

菫花は杏花を抱きしめながら、体中を撫でて確認する。

杏花は安堵からか「うわぁぁぁぁん!」と大声をあげて菫花の腕の中に収まった。

「っ、くっ――」

「待て!」

どさくさに紛れて玄関から逃げようとしている男を掴まえ、腕を捻り上げる。

「いったたたた! 違うんだ! 俺はただ、菫花ちゃんに親切にしてただけで――」

「ふざけるな」

「ぎゃあああ」

両腕をうしろに捩じり上げ、背中に膝を入れると、男は涙目で痛い痛いと呻いた。当然だ。痛みを感じるようにやっている。

菫花への乱暴を思うと骨の一、二本折れようがかまわない気もしたが、怒りをぐっとこらえ踏みとどまった。

「こりゃ、なんの騒ぎだ?」

壊れたドアから、このマンションの居住者とみられる男性が覗き込んでくる。

男への腕を緩めぬまま「警察を呼んでください」と頼み、ざっと事情を説明した。

「違う! あの女が悪いんだ! 俺を誘惑して――」

微塵も反省の色が見えない男に、俺は「黙れ」と拘束を強める。

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