結ばれてはいけない御曹司に一途な想いを貫かれ、秘密のベビーごと溺愛されています
それに高い食材でお料理を作るより、どれだけ安くておいしいご飯が作れるかを考える方が燃えるというもの。

これまでのシングルマザー生活で身についた節約術。理仁さんに呆れられない程度に節制は続けたいと思っている。

買い物を終えマンションの入口まで辿り着くと、杏花は今さら歩きたいと言ってベビーカーを降りた。

道路に接する正門からエントランスまでは、舗装された道が伸びていて、脇には緑豊かな中庭が広がっている。ベンチがいくつか並び、住民の憩いの場だ。

はしゃぎだした杏花に「ちょっとだけよ」と声をかけると、「しゃんぷん、ね」と以前よりちょっぴり上手になった『三』を指で作り、芝生を駆けていった。

脇にベビーカーを止め、走り回る杏花を眺めていると。

「綿来菫花様ですね」

突然背後から声をかけられ、私は驚いて振り向いた。

パリッとしたオフホワイトのパンツスーツに上質な革のパンプスとバッグ。

品のいいアップスタイルに知的な眼鏡――凛としたその出で立ちは忘れもしない、前当主の顧問弁護士だ。

「あなたは……三原さん」

「ご無沙汰しております」

三原さんは私へ深々と頭を下げる。

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