結ばれてはいけない御曹司に一途な想いを貫かれ、秘密のベビーごと溺愛されています
杏花がいるのにどうしよう……ちらりと視線を杏花の方に向けると、気づいた三原さんが「すぐに済みますので」と言い添えた。

「本日はご連絡に参りました。前当主からの出資は、もう必要ないと理仁さんからうかがいましたので」

今後の出資は、前当主に変わって理仁さんがする。

理仁さんと一緒に決断したこととはいえ、前当主との約束を破ってしまったうしろめたさは拭い切れない。

「はい。異論ありません」

私が頭を下げると、彼女は「では、そのように手続きいたします」と機械的に答えて背中を向けた。

しかし、立ち去ろうとして一歩を踏み出したところで、ぴたりと足を止める。

「……ここから先は、私個人の意見なのですが」

彼女はちらりと振り向き、眼鏡の奥の目をすっと細くした。

「あなたは理仁さんの人生をめちゃくちゃにして、心が痛みませんか?」

三原さんの言葉が無防備だった私の心に突き刺さり、痛いと感じる間もなく胸を抉った。

予期せず思い起こしたのは、母の言葉だ。『理仁さんの出世の邪魔にならなければいいんだけれど……』――少なからず私は、理仁さんの人生を狂わせた自覚がある。

< 150 / 182 >

この作品をシェア

pagetop