結ばれてはいけない御曹司に一途な想いを貫かれ、秘密のベビーごと溺愛されています
「ママー?」

気がつくと足もとに杏花がいて、不安そうにこちらを見上げていた。

約束の三分になったからきちんと戻ってきたのだろう。でも私の表情を見て、なにかがおかしいと気づいたみたいだ。

「長くなり申し訳ありませんでした」

三原さんが胸ポケットから名刺を抜き取り、私へ差し出す。

「少しでも罪悪感があるなら、ご連絡を。我々はあなたに三千万円の手切れ金をご用意できます。綿来家への出資も続けるとお約束しましょう。これが最後のチャンスだと思ってください」

手切れ金などいらない、私はそんなものを望んでいない。

そう言おうとしたところで、両親の顔が頭をよぎる。ああ、ダメ……私が出資を受け取らなければ家業が……。

予期せず己の浅ましさに気づき、彼女の言う通り、自分が最低な人間に思えてきた。

お金のために理仁さんに取り入ったと言われても否定できない。こんな私に理仁さんと一緒にいる資格があるのだろうか。

ショックを受け鈍った頭で、差し出された名刺を受け取ろうと手を伸ばしたとき――。

「受け取らなくていい」

低く張りつめた声が道路の方から響いてきて、私たちは振り向いた。

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