結ばれてはいけない御曹司に一途な想いを貫かれ、秘密のベビーごと溺愛されています
一方で綿来家は、綿来製鉄再建に向けて財政の見直しも含めた大規模な施策を行っているから、あまり派手な式を挙げると、周囲から冷たい目で見られてしまうかもしれない。

ぶつぶつと考え始めた私を見て、理仁さんが杏花を抱っこしながら笑う。

「菫花はそうやって、思い悩むと思っていたよ。気苦労が尽きないだろうなって」

廊下の突き当たりの部屋で、スタッフが両開きの木製扉を開く。するとそこには――。

「だから、もう計画は済ませた」

目の前に、ウエディングドレスとタキシード、そしてもうひとつ、子ども用の小さなドレスが飾られている。

その両側に立っているのは、私と理仁さんの両親だ。

呆然としていると、理仁さんのお母様が「理仁、菫花さん。結婚おめでとう」と上品に微笑んだ。正礼装である黒のロングドレスを着ている。

「これは……どういう……」

理解が追いつかずつぶやきを漏らすと、モーニングコートを纏った理仁さんのお父様が「気負わなくていい、簡易的な式だ」と襟もとを直した。

「本格的な式を挙げるとなると、ふたりも大変だろう。かといって、なにもしないのは寂しいからな」

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