結ばれてはいけない御曹司に一途な想いを貫かれ、秘密のベビーごと溺愛されています
彼は私の手の届かないところにいる人ではないかと。

「出自など見ずに、素直に聞かせてほしい。君は俺と、どういう関係になりたい?」

ぐっと唇をかみしめる。私と彼の距離は遠い。とても隣に並べるような人じゃない。

それでも。

意を決すると、私は彼の胸に飛び込んだ。

「あなたに愛されたいです」

これまで他人にわがままなど言ったことはない。胸の内の激情を、表に出すこともなかった。

ううん、そうじゃない。胸に収まりきらないほどの激しい愛情を他人に抱いたことがなかったんだ。

「ずっと一緒にいたい。船を降りたあとも、離れたくありません」

これが迷惑になってしまうのかはわからない。けれど、私はこの気持ちを彼に伝える権利がある。

理仁さんは私を抱きとめると、いつも穏やかな彼にしてはらしくない、掠れた声を絞り出した。

「ずっと一緒にいる。船を降りたあとも、君のそばにいると約束する」

そう答え、再び私の唇を奪う。近くにあったソファに倒れこみ、ふたり、愛を誓うように体を交わらせる。

彼と出会って五日目の夜が更けていく。

昨夜とはまったく違う、激しくも甘美な求愛の遊戯を、私は一生忘れないだろう。

このあと訪れる別れを、お互い予期していたのかもしれない。

運命に抗うように、ふたり、激しく愛をぶつけ合って。

きっとこのとき、私のお腹に愛くるしい天使が宿ったのだ。



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