結ばれてはいけない御曹司に一途な想いを貫かれ、秘密のベビーごと溺愛されています
完全に八方塞がりのまま、二日が経った、そんなとき。

思わぬ人物がコンタクトを取ってきた。

藤ヶ音家当主の顧問弁護士と名乗る女性だ。交渉がしたいと綿来家を訪れた。

三原(みはら)と申します。藤ヶ音家当主の代理で参りました」

三原さんは真っ白なパンツスーツに身を包み、髪を結いあげ、知的な眼鏡をかけていて、いかにも有能そうな佇まいだ。

歳は二十代後半くらいだろうか。私とそこまで変わらないとは思うが、落ち着いている分、大人の女性に見える。

凛とした彼女を見ていると、のんびり生きてきた不甲斐ない自分を知らしめられるようでつらかった。

「担当直入に申し上げます。当主のご令孫、藤ヶ音理仁から手を引いていただきたい」

三原さんの要求を聞いて、理仁さんのご家族が婚約に反対しているのだと知った。言い方からして、理仁さんには内緒で来たのだろう。

「今、あなたはお困りのはずです。条件を呑んでいただく代わりに、手を貸しましょう」

そもそも『お困り』だとなぜ知っているのかと私は眉をひそめる。この綿来製鉄の倒産危機は世に出回っていない情報だ。

「私どものなにをご存じなのでしょうか?」

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