結ばれてはいけない御曹司に一途な想いを貫かれ、秘密のベビーごと溺愛されています
「我々は銀行とも深いコネクションを持っていますので。経営は右肩下がり、返済状況が芳しくないことも知っております。加えて、ご両親が失踪されているという噂も」

藤ヶ音家がその気になれば、そんな内々の情報まで筒抜けになってしまうのか。

私はぞっと背筋が冷えた。もしもその情報を公にすると脅されれば、どんな要求も呑むしかない。

しかし、幸いにも脅されることはなく、三原さんは淡々と提案を述べた。

「まず、あなたのご両親を探し出します。それから、引き続き銀行から融資を受けられる程度の出資をしましょう。あなたが約束を守ってくださる間は」

負債分全額出資すると言わないのは、金額を出し渋っているわけではなく、約束を継続させるためにもっとも効率のいい方法を選んだのだろう。

三原さんはバッグから一枚の書類――契約書を出すと、テーブルに置いた。

「あなたが藤ヶ音理仁と連絡を取るような素振りを見せれば、出資は即刻打ち切ります」

――お金を払う代わりに縁を切れだなんて、まっとうな提案とは言えない。

とはいえ、私はもうお手上げだった。

綿来製鉄が潰れれば、何万人という従業員が露頭に迷う。

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