結ばれてはいけない御曹司に一途な想いを貫かれ、秘密のベビーごと溺愛されています
なんとか倒産は免れたが、経営が上向きになったわけではない。ぎりぎりの状態が今後も続いていく。

家族一丸となって乗り越えよう、そう結束を強めた矢先のこと。

私の妊娠が発覚した。



妊娠が藤ヶ音家にバレないように、私は実家を出て離れた場所に家を借りた。

当初は出産に反対していた両親だったが、私の産みたいという意を酌み、黙って送り出してくれた。

就職しようと試みたけれど、就労経験ゼロ、なにより妊娠中の私を雇ってくれる場所なんてどこにもなかった。

なんとか頼み込み、個人経営のお店や、定食屋さんでお手伝いをさせてもらったけれど、徐々に膨らんでいくお腹に、手伝うよりも気を遣われる方が多くなってしまい、やがて辞めざるを得なくなった。

子どもの頃から貯めていたお小遣いを出産資金にと持ってきたが、それでもとにかくお金が足りない。かといって働くこともできない。

世の中はこんなにもつらく厳しい――二十四歳にしてようやく洗礼を受けた私は、これまでの人生のあらゆることを後悔した。

両親に甘え、なんの社会経験も積んでこなかった自分に。そして、理仁さんと出会ったあの日、軽率に体を重ねてしまったことにも。

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