結ばれてはいけない御曹司に一途な想いを貫かれ、秘密のベビーごと溺愛されています
この子のためと言われて心が揺らぐ。私が一番に考えなければならないのは、杏花の幸せだ。

でもご当主だって、同じくらい孫の幸せを願っていたはずなのだ。私が杏花を大事に思うのと、同じように。

「杏花は、あなたの子ではありません」

ご当主の意志をなかったことになどできない。私がはっきり言い切ると。

「……わかった」

理仁さんは冷静にそう返事して目を閉じた。

納得してくれたの?

端正な顔をまじまじと観察していると、瞼がゆっくりと開き、ブルーの混じった懐かしい色の瞳がこちらに向いた。

「なら、俺と結婚を前提に付き合ってほしい。杏花のことも、菫花と同じくらい大切にする。たとえ俺の子でなかったとしても」

「えっ」

驚いて杏花を抱きしめる。父親だと認めさせることをあきらめ、交際を申し込んでくるだなんて。

理仁さんの目は鋭く、簡単には引き下がってくれそうにない。きっと心の中では、杏花は自分の子だと確信しているのだろう。

「……男性と交際なんてしている余裕はありません。私は杏花のことで精いっぱいです」

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