結ばれてはいけない御曹司に一途な想いを貫かれ、秘密のベビーごと溺愛されています
「ここに来たのは、君のためでもあるんだから」

その一言で、視界を覆っていた霧が晴れた、そんな気がした。

これまで私は、杏花を楽しませることだけを考えていた。杏花を幸せにすることが私の使命なのだと。でも――。

――私も、楽しんでいい?

杏花は私のうさ耳が羨ましくなったようで、ぴょんぴょん跳ねながら「ももかもー!」と叫んでいる。

「どれがいい?」

「おぼーち!」

「帽子もかわいいね。じゃあ、くまの帽子は?」

「もっと、かあーいいの!」

そう言って杏花は大きなリボンと尻尾のついたリスの帽子をおねだりする。

「はい。じゃあ、リスさんをどうぞ」

「パパは?」

「え?」

突然『パパ』と呼ばれた理仁さんは、驚いたように目を見開く。

初めて会った日にもパパと呼ばれたが、あのときの杏花は寝ぼけていた。

真っ向から言われたのはこれが初めてだ。

杏花が理仁さんをパパと認めた――いや、パパになってほしいと思ったのだろう。

「パパも、うしゃぎしゃん」

「パパはいいんだ。ママと杏花がかわいければ……」

「らめ、パパも!」

杏花が選んだのは、私とお揃いの茶色うさぎのカチューシャだ。

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