結ばれてはいけない御曹司に一途な想いを貫かれ、秘密のベビーごと溺愛されています
思いもよらない指摘を受けて、私は凍り付く。

杏花の前では、ずっと笑顔でいるように心がけていた。それが杏花の健やかな成長に繋がるから、と。

それは、心からの笑顔だった?

「菫花はなにをしても笑顔だから、おかしいと思っていんだ。困ったとき、杏花が駄々をこねたとき、本当はもっと怒ったり泣いたりしたいんじゃないのかって」

見ないようにしていた心の内側を覗かれ、胸がざわつく。

弱音を吐きたいときはたくさんあった。イライラして怒鳴りたいときだって。

それでも感情を飲み込んで、気づかないふりをして、笑顔を作り続けてきたのは。

――杏花のため……ううん、自分のため?

「『笑顔でいるよう心がけるようになったら、杏花がグズらなくなった』って言ってたよな。無意識のうちに、笑顔を張り付けていたんじゃないのか?」

杏花のためといいつつ、自分のために笑顔を張り付けていたのかもしれない。

笑顔という名の都合のいい鎧を纏い、周囲を騙し、果ては自分まで欺いていた。

幸せな家庭だと信じたかったから。

でも、本当は……。

「俺がいるときは、無理をしなくていい」

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