結ばれてはいけない御曹司に一途な想いを貫かれ、秘密のベビーごと溺愛されています
意外と人の顔色を見て、いい子にしたりわがままを言ったりしている杏花は、まだ二歳半とはいえ考えて行動しているのだとわかった。

隣で手を繋いだままでは、きっと近すぎて気づけなかっただろう。

「理仁さんこそ、大変だったでしょう? 子どものお世話は」

どちらかというと彼の方が心配だ。せっかくの休日だというのに、疲れ切ってしまったのではないかと。

「疲れてないとは言わないが……嫌な疲れ方じゃない。すごく……満足だ」

理仁さんの清々しい表情を見て、負担にならなくてよかったと胸を撫で下ろしている自分がいた。

彼と家族になることはかなわないとわかっているのに、おかしな話だ。

「まだまだ小っちゃくてかわいいな」

理仁さんは笑みをこぼしながら杏花を見つめる。

「……いいえ。大きくなったんです。最初は、こんなだったんですから」

私が赤ちゃんの頃の杏花を抱きかかえる真似をすると、理仁さんの手が私の頭に伸びてきた。

「そんなに大きくなるまで、菫花ひとりで頑張ったんだな」

頭の上でぽんぽんと彼の手がバウンドする。

予期しなかった労いに、またしても心の鎧が剥がれそうになる。

「……はい。頑張りました」

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