結ばれてはいけない御曹司に一途な想いを貫かれ、秘密のベビーごと溺愛されています
ごくんと大きく息を呑み込み、溢れそうになる涙をこらえた。

泣くことしかできなかった赤ちゃんが、自分の力で立って歩けるまでになった。

自分の口でしゃべり、意見を言う。あんなに小さかった手が、今では意志を持って母の手をしっかりと握る。

あの二六〇〇グラムしかなかった、ちっちゃなちっちゃな赤ちゃんが、こんなにも大きく。

私がここまで育てたんだ。

うつむいていたら、理仁さんの腕が肩に回り、そっと私を抱き寄せた。

「言っただろう。泣いてもいいって」

ぐらりと心が揺さぶられる。

「その涙は、悲しみじゃないんだろう?」

私はこくりと頷く。この涙は嘆きや後悔などではない。喜びだ。

もちろん、まだまだ先が長いことは知っている。大変なのはきっとこれから。

でも――。

「ここまで大きくなってくれて、よかった……」

気が抜けた途端、ぼろぼろと涙がこぼれ落ちてきた。

情けなく嗚咽を漏らす私を、理仁さんが胸で受け止める。

「……ごめん。ありがとう」

その言葉は、父親としてそばにいられなかった責任を感じているからだろうか。

私は大きく首を横に振る。理仁さんはなにも悪くない。

最初から間違いなど、なにひとつなかったのかもしれない。今ここに杏花が元気でいてくれることを思えば。

声を詰まらせた私は、彼の胸を借りて涙をこぼした。



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