双子を極秘出産したら、エリート外科医の容赦ない溺愛に包まれました
そんなことを言いながら一歩一歩近づいてくる。

後ずさりたくても、怖くて足が動かなかった。

「僕、今日の診察で通院は最後だったんです。もう病院は行けないしこれからはこっちに持ってこようかなぁ、谷本さんへの差し入れ」

勝手なことを言いながら、男はどんどん距離を詰める。

葵は恐怖で声をあげることもできなかった。

「谷本さーん、どうしたんですか? いつもと全然違うじゃないですかあ? 笑ってくださいよぉ、僕谷本さんの笑顔が好きなのにぃ」

少し大きな声を出して、男が葵の腕を掴む。
ぞわりと嫌な感覚が身体中を駆け巡った。

「やっ……!」

葵は咄嗟にその手を振り払う。ようやく少し動いた身体で一歩下がった。

男が顔を歪めた。

「なにその反応、失礼じゃないですか? 人をまるでばい菌みたいに」

そしてまた葵との距離を詰める。葵を捕らえようと手を伸ばす。

「や、やめてください」

震える声でそう言って葵が彼から逃れようとした、その時。

「なにをしてる!」

鋭い声とともに、葵はグイッと後ろに引っ張られ、男から引き離される。

突然現れた晃介が男と葵の間に割ってはいり、葵を守るように立ちはだかった。

男が驚いて晃介を睨み、わなわなと口を開いた。

「な、な、なんだあんた。いきなり割り込んできて」

それに晃介が切り返した。

「君こそ彼女になんの用だ。嫌がっているじゃないか」

「おおお俺は谷本さんの患者だ!」

「患者?」

晃介が訝しむように目を細める。

男が喚いた。
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