双子を極秘出産したら、エリート外科医の容赦ない溺愛に包まれました
白河大介が立っていた。心なしか少し青ざめている。

「入りなさい」
 
その言葉に従い中に入り、二、三歩踏み出したところで葵はあることに気がついて足を止める。

広い部屋の手前に設けられた応接スペースに見知らぬ人がふたり並んで座っている。
 
一瞬葵は、自分が早く来すぎたのだろうかと思う。でもその葵を大介は応接スペースの手前のソファに座るよう促した。

「なにをしてるんだ。早く座りなさい」
 
訝しみながら、葵が言う通りにすると、大介は葵の隣にひとり分のスペースを空けて腰を下ろす。
 
見ず知らずの人物ふたりと、向かい合わせに座っているという居心地の悪い状況の中、葵は彼らを観察する。
 
ひとりは大介と同じくらいの年齢の男性だ。

きっちりとスーツを着ていて、どこか大介と同じような威圧的な空気をまとっている。

はじめて顔を合わせるというのに、眉間に皺を寄せて葵に対する不快感が滲み出ているように思えた。
 
もうひとりは葵より少し若い女性だった。上品な水色のワンピースを着て、ひと目で高級だとわかるバッグを傍に置いている。

茶色い髪をハーフアップにしている派手な美人だった。
 
こちらも初対面にしては不思議なほど不機嫌な表情で、葵を睨みつけていた。
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