双子を極秘出産したら、エリート外科医の容赦ない溺愛に包まれました
家族へ

葵の告白

晃介が帰国する日の午前中、仕事の休みを取った葵はひとり成田空港にいた。

言うまでもなく、彼を出迎えるためである。

本当なら子供たちも保育園を休ませて連れてきたかった。

この一カ月彼らは随分と晃介を恋しがったし、それは晃介の方も同じだろうから。
 
けれど、二年半前の出来事と彼がいない間に起こったことを一刻も早く話したくて、こうしてひとりやってきたのである。
 
到着ゲートから彼が出てくるのを、葵は今か今かと待っている。

ストックホルムからの便は三十分ほど前に無事到着したようだから、もうまもなく出てくるはずだ。
 
スーツケースをカートに乗せて出てくる人たちを葵はジッと見つめている。

そしてついに、黒いダウンジャケットを着た晃介を発見した。

「晃介!」
 
彼の名を呼び、葵は思わず走り出す。そんな葵に気がついてカートから手を離した彼の胸に飛び込んだ。

「晃介、おかえりなさい!」
 
広い背中に腕を回して、一カ月ぶりの彼の香りを胸いっぱいに吸い込んだ。

「ただいま、葵」
 
彼の方も強く葵を抱きしめて、髪に頬ずりをして答えた。

こんなに人目のある場所で抱き合うなんて、普段の葵には考えられない行動だ。

でもそうせずにはいられなかった。この一カ月心細くて会いたくてたまらなかった。
 
彼と再会するまではひとりだったはずなのに、いったいどうやって過ごしていたのだろうと思うくらいだったのだ。
 
こうやって再会を喜ぶのは、空港ではよくあることなのだろう。

幸いにして、行き交う人からもそれほど注目されていないようだった。
「体調、崩したりしなかった? あっちは随分寒いみたいだけど」
 
存分に彼の温もりを感じた後、少し身を離して彼を見上げる。
 
晃介が、葵の頬に手をあてて微笑んだ。
「ああ、桁違いだったよ。でも大丈夫、君たちも元気だったみたいで安心した。迎えにくるってさっきメッセージ見たところなんだ。びっくりしたよ。仕事は休んだのか?」
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