双子を極秘出産したら、エリート外科医の容赦ない溺愛に包まれました
「うん、一秒でも早く会いたかったの。待てなかったのよ」

「そうか、俺もだったから嬉しいよ」
 
晃介が心底嬉しそうにする。
 
その彼に微笑み返してから、葵は大事なことを口にした。

「それともうひとつ理由があって……。あのね、実は……晃介に今すぐ聞いてほしいことがあるの。帰国したばかりで疲れてるのに、申し訳ないけど」
 
それを聞いて晃介が真剣な表情になる。詳しい内容まではわからなくとも、なんの件についての話かは見当がつくようだ。

「もちろん大丈夫だ。……話せる場所に移動しよう」
 
そしてふたりは展望デッキへやってきた。吹き抜ける風は冷たいけれど、でもその分人が少なくて、ゆっくりと話ができそうだ。
 
手すりを掴み並んで滑走路を眺める。晃介が、今まさに離陸していったジェット機を見つめながら口を開いた。

「ここいいな。子供たちを連れてきたら喜びそうだ。飛行機も好きだろう?」

「うん、好き。本物を見たことはないから喜ぶと思う」
 
青空に飛び立つ白い機体を目で追って、葵は答える。
 
晃介がフッと笑った。

「不思議だな。今までここには何度か来たことがあるけど、ここまですごいなとは思わなかったのに。スウェーデンでの一カ月間、俺ずっとこうだったんだ。ストックホルムは水の都って言われてるくらいいたるところに船があるんだけど、見かけるたびに子供たちに見せたいなぁと思ったり。雪が降れば、晴馬と悠馬に雪だるまを作ってやりたいと思ったり。ふたりに会ってから、自分の世界が広がったような気がするよ」
 
滑走路を眩しそうに見つめながら子供たちのことを口にする晃介は、子を慈しむ優しい父親の目をしている。
言葉の内容も、葵にとっては共感できるものだった。
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