双子を極秘出産したら、エリート外科医の容赦ない溺愛に包まれました
親になってから起きた心の変化は、今まで気にも留めなかったようなことひとつひとつが特別に感じられるという、素晴らしいものだった。
 
その変化を、彼も自分と同じように感じているのが嬉しかった。
 
そしてそのこと自体に、勇気づけられたような気持ちになる。
どんな困難が降りかかろうとも、彼と一緒に子供たちを育てたい。子供たちと葵には、絶対に彼が必要だ。

「私も同じよ」
 
冷たい手すりを掴む手に力を込めて"大丈夫"と葵は自分に言い聞かせる。大丈夫、彼となら乗り越えられるはず。
 
そして隣の彼に向き直り、決意を込めて呼びかける。

「あのね、晃介」
 
晃介が金網に手をついたまま、葵の方を向いた。

「晃介がスウェーデンに行っている間……私、晃介のお父さん、白河理事長に会ったの」

「……父に?」
 
葵の口から出た、おそらく彼にとっては意外な人物の名前に、晃介が眉を寄せた。

「うん、私たちの事情を知っていらして……。それから厚生労働大臣政務官の山里さんって人と、その娘さんの美雪さんも一緒だった」
 
葵の言葉に晃介が息を呑む。
 
その彼がなにか言う前に、葵は次の言葉を口にする。

「理事長は、晃介と美雪さんは婚約してるっておっしゃってた。……先日お見合いもしたって……」

「違う!」
 
そこで晃介が鋭く葵の言葉を遮った。

「それは違う。誤解だ、葵」

 そしてそのまま事情を説明する。
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