双子を極秘出産したら、エリート外科医の容赦ない溺愛に包まれました
「うん……私、頑張った。子供たちとあなたを愛してるから。もう迷わないって決めたから」
 
声に出して葵は自分で自分を褒めた。胸の中の塊を完全に消し去るには必要なことのように思えたからだ。

「ああ、君は子供たちにとって最高の母親だ。そして俺にとっては最高の……妻だ」
 
最後の言葉に力を込めて彼は言う。
頬に温かい手があてられた。

「葵、話してくれてありがとう。父のことは俺が必ず解決する。だから結婚してくれ。晴馬と悠馬と、一緒に生きていこう」
「晃介……‼︎」
 
広い背中に腕をまわして、葵は彼の胸に力いっぱい抱きついた。

頬に感じる温もりも自分を包む強い力も、なにもかもが愛おしくてたまらなかった。

「うん。ずっと一緒にいる。晃介と結婚する」
 
そしてふたりは、互いの存在を確かめ合うように長く長く抱き合った。

これ以上ないくらいの幸福感と彼の温もりに葵は目を閉じて身を委ねる。
 
ゴーと音を立てて外国の航空機が着陸した。強い風が吹き抜けて、葵の髪がなびいた時、晃介のジャケットのポケットが震えた。
 
携帯に着信があったのだ。取り出して彼は眉を寄せる。携帯を持つ彼の手の位置から葵も画面が確認できた。
 
大介からだ。
 
晃介が一瞬考えてから、通話を開始した。
「……はい」
 
その彼の行動に、葵は反射的に彼から離れようとする。

親子の会話を勝手に聞かない方がいいと思ったからだ。
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