双子を極秘出産したら、エリート外科医の容赦ない溺愛に包まれました
けれど晃介は葵を強く抱いたまま離さない。背中の手が葵を安心させるようにトントンとした。

「さっき帰国したばかりです。はい、有意義な滞在でした」
 
親子としての親しげな挨拶をするでもなく、淡々とスウェーデン研修の報告をしている。

「最終結果はまた正式に提出いたします。……はい、来週からで。了解しました」
 
最後に、おそらくは電話を切ろうとする大介を止める。

「待ってください、……父さん」
 
低い声で大介を父さんと呼び、暗に内容がプライベートなものだと告げている。

「……話があるんです。今からそちらに向かいます」
 
葵の鼓動が飛び跳ねる。
 
では彼は、『俺が解決する』という言葉を、今から実行するつもりなのだ。
 
どうやら大介からは"了承"の返事があったようだ。彼は、およその到着時間を告げて電話を切った。

「晃介……」
 
葵は思わず彼のジャケットを握りしめた。
 
正直言って不安だった。
 
なにがあっても彼と自分が離れることはない。それは固く決意している。

でもそれ以外のことがどうなってしまうのかまったく予想がつかなった。

「晃介……美雪さんとの縁談が破談になれば、晃介の立場も危うくなるって、理事長はおっしゃってたの。山里政務官は、晃介には手出しはしないっておっしゃってたけど、最後は私、怒らせてしまって……」

「大丈夫、葵はなにも心配しなくていい」
 
そう言って、晃介は葵を安心させるように微笑む。

そして滑走路に視線を送り日の光を反射させる白いジャンボジェットを睨んだ。

「今度は俺が、葵の信頼に応える番だ。必ず君達を守り抜く」
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